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東京地方裁判所 平成6年(ワ)18792号・平12年(ワ)5262号 判決

平成六年(ワ)第一八七九二号 債務不存在確認等請求事件(甲事件)

平成一二年(ワ)第五二六二号 貸金請求事件(乙事件)

甲事件原告・乙事件被告 深山てい

甲事件原告 深山鐵之助

甲事件原告 深山巍之助

甲事件原告 田中珂久子

甲事件原告 深山護之助

右甲事件原告ら・乙事件被告訴訟代理人弁護士 中村浩紹

同 弓仲忠昭

甲事件被告 日本生命保険相互会社

右代表者代表取締役 伊藤助成

右訴訟代理人弁護士 篠崎正巳

甲事件被告・乙事件原告 株式会社東京三菱銀行

右代表者代表取締役 岸暁

甲事件被告 ダイヤモンド信用保証株式会社

右代表者代表取締役 丹後忠次郎

右両名訴訟代理人弁護士 羽田野宣彦

主文

一  甲事件原告深山ていを除く甲事件原告らの請求及び甲事件原告深山ていの主位的請求をいずれも棄却する。

二  甲事件被告日本生命保険相互会社は、甲事件原告深山ていに対し、一億五一五九万六〇八五円とうち四〇三六万八四九六円に対する平成二年五月一一日から、うち一億一一二二万七五八九円に対する平成一二年二月一七日から、それぞれ支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。

三  甲事件原告深山ていの甲事件被告日本生命相互会社に対するその余の予備的請求、甲事件被告株式会社東京三菱銀行、甲事件被告ダイヤモンド信用保証株式会社に対する予備的請求をいずれも棄却する。

四  乙事件被告は、乙事件原告に対し、五億六八五二万〇八六九円及びうち三億七〇〇〇万円に対しては平成一一年一〇月二七日から、うち一億四六〇二万九五三一円に対しては平成一一年九月二九日から、それぞれ支払済みに至るまで年一割四分の割合による金員を支払え。

五  訴訟費用のうち、甲事件原告・乙事件被告深山ていに生じた費用の六分の一と甲事件被告日本生命保険相互会社に生じた費用の一〇分の一は甲事件被告日本生命保険相互会社の負担とし、甲事件原告・乙事件被告深山ていに生じたその余の費用、甲事件被告日本生命保険相互会社に生じた費用の一〇分の一及び甲事件被告・乙事件原告株式会社東京三菱銀行に生じた費用の二分の一は甲事件原告・乙事件被告深山ていの負担とし、甲事件被告日本生命保険相互会社及び甲事件被告・乙事件原告株式会社東京三菱銀行に生じたその余の費用並びに甲事件原告・乙事件被告深山ていを除くその余の甲事件原告らに生じた費用は甲事件原告・乙事件被告深山ていを除くその余の甲事件原告らの負担とし、甲事件被告ダイヤモンド信用保証株式会社に生じた費用は甲事件原告らの負担とする。

六  この判決の第二項及び第四項は、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

一  甲事件原告らの請求(以下甲事件原告らを単に「原告ら」という。)

1  甲事件原告深山ていの主位的請求

(一) 甲事件原告・乙事件被告深山てい(以下「原告てい」という。)と甲事件被告・乙事件原告株式会社東京三菱銀行(以下「被告三菱銀行」という。)との間の、平成二年四月一一日付金銭消費貸借契約(別紙ローン契約等目録第一、(一))に基づく原告ていの被告三菱銀行に対する元本三億七〇〇〇万円、未払利息五二二六万二四九二円及び損害金一六〇三万六七一二円の返還債務及び前同日付当座貸越契約(別紙ローン契約等目録第一、(二))に基づく原告ていの被告三菱銀行に対する元本一億四六〇二万九五三一円、未払利息二二万八八四六円及び損害金七八九万七五九七円の返還債務が、いずれも存在しないことを確認する。

(二) 甲事件被告日本生命保険相互会社(以下「被告日本生命」という。)は、原告ていに対し、三億六〇三二万二五〇〇円及びこれに対する平成二年四月一一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

(三) 甲事件被告ダイヤモンド信用保証株式会社(以下「被告ダイヤモンド保証」という。)は、原告ていに対し、別紙第一物件目録三ないし八及び別紙第二物件目録四ないし六記載の各不動産についてされた別紙登記目録記載の根抵当権設定登記の抹消登記手続をせよ。

(四) 被告ダイヤモンド保証は、原告ていに対し、七三〇万二八二〇円及びこれに対する平成二年五月一一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

(五) 甲事件被告ら(以下甲事件被告らを単に「被告ら」という。)は、原告ていに対し、連帯して、三五五〇万六一九八円及びこれに対する平成二年五月一一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

2  原告ていの予備的請求

被告日本生命、被告三菱銀行及び被告ダイヤモンド保証は、原告ていに対し、連帯して、三億〇九一九万二一七一円及びこれに対する平成二年五月一一日より支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

3  原告ていを除くその余の原告らの請求

(一) 甲事件原告深山鐵之助(以下「原告鐵之助」という。)と被告三菱銀行との間の平成二年四月一一日付連帯保証契約(別紙ローン契約等目録第一、(二)記載の当座貸越契約についてのもの)に基づく、原告ていと被告三菱銀行との間の前同日付当座貸越契約に基づく債務についての保証債務が存在しないことを確認する。

(二) 原告鐵之助、甲事件原告深山巍之助(以下「原告巍之助」という。)、甲事件原告田中珂久子(以下「原告珂久子」という。)及び甲事件原告深山護之助(以下「原告護之助」という。)と被告ダイヤモンド保証との間の平成二年四月一一日付連帯保証契約(別紙ローン契約等目録第二、(一)、(二)記載の保証委託取引契約についてのもの)に基づく、原告ていと被告ダイヤモンド保証との間の前同日付保証委託取引契約に基づく各債務についての保証債務が存在しないことを確認する。

(三) 被告ダイヤモンド保証は、原告鐵之助に対し、別紙第一物件目録一ないし五、七及び八並びに別紙第二物件目録一ないし三記載の各不動産についてされた別紙登記目録記載の根抵当権設定登記の抹消登記手続をせよ。

二  乙事件原告の請求

主文第四項同旨

第二事案の概要

一  本件は、保険会社の勧誘を受けて、相続対策のために、銀行から融資を受けて一時に保険料を支払って変額保険に加入した保険契約者及び銀行から融資を受けることに関して連帯保証等をした保険契約者の子供らが、変額保険契約、消費貸借契約の錯誤による無効、詐欺による取消し、公序良俗違反による無効、説明義務違反等の不法行為を主張して、保険会社に対しては、支払保険料の返還、損害賠償などを求め、銀行及び信用保証会社に対しては、借入債務及び保証債務の不存在確認、根抵当権設定登記の抹消登記手続、損害賠償などを求めた甲事件と、銀行が保険契約者に対して貸付金の返還を求めた乙事件が併合審理された事件である。

二  前提となる事実

1  当事者

(一) 原告ていは、明治四四年九月二四日生まれの女性であり(平成二年五月当時七八歳)、原告鐵之助は、原告ていの長男、原告巍之助は、原告ていの三男、原告珂久子は、原告ていの長女、原告護之助は、原告ていの四男であり、深山洋子(以下「洋子」という。)は、原告巍之助の妻である(争いがない。)。

(二) 被告日本生命は、生命保険を業とする会社であり、後述する田辺恒明、大野堅次、豊島やよいは、いずれも、平成二年当時、被告日本生命の日本橋総支社営業部に属する従業員であった(争いがない。)。

(三) 被告三菱銀行は、銀行、金融取引を業とする株式会社であり、後述する高橋俊雄は、平成二年当時、被告三菱銀行の錦糸町支店に属する従業員であった(争いがない。)。

(四) 被告ダイヤモンド保証は、金融、保証取引を業とする株式会社である(争いがない。同被告と被告三菱銀行を併せて以下「被告三菱銀行ら」ともいう。)。

2  本件保険契約の締結

原告ていは、平成二年五月一日、被告日本生命との間で、変額保険である別紙保険契約目録記載の生命保険契約四件(以下この契約を「本件保険契約」といい、本件保険契約の対象となった保険を「本件変額保険」という。)を締結し、これに先立つ同年四月一一日、被告日本生命に対し、右各契約の保険料合計三億六〇三二万二五〇〇円を支払った(甲一の一ないし三、二の一ないし三、三の一ないし三、四の一ないし三。原告らと被告日本生命との間では争いがない。)。

3  本件消費貸借契約等の成立

(一) 被告三菱銀行は、原告ていに対し、平成二年四月一一日、弁済期を平成二二年四月二六日、利息を七・九パーセント(ただし変動利率とする。)、遅延損害金を年一四パーセントとし、弁済遅延の場合、書面による督促により期限前の全額弁済義務が発生する旨の約定で、三億七〇〇〇万円を貸し付けた(甲五。原告らと被告三菱銀行らとの間では争いがない。以下「本件消費貸借契約」という。)。

(二) 平成二年四月一一日、被告三菱銀行と原告ていは、融資極度額を三億七〇〇〇万円、利率を長プラ型(長期プライムレート連動型)、返済方法を元金据置型(ただし利息は毎月五日払い)、遅延損害金を年一四パーセントとし、弁済遅延の場合、書面による督促により期限前の全額弁済義務が発生する約定の下に当座貸越契約(カードローン)を締結し(以下「本件当座貸越契約」という。)、右契約に基づき、原告ていは、被告三菱銀行から平成一二年二月一六日までに合計一億四六〇二万九五三一円を借り受けた(甲七、一五五の二。原告らと被告三菱銀行らとの間では争いがない。)。

4  連帯保証契約等の成立

(一) 原告鐵之助は、平成二年四月一一日、被告三菱銀行との間で、本件当座貸越契約上の原告ていの債務を保証する旨の連帯保証契約を締結した(甲七。原告らと被告三菱銀行らとの間では争いがない。)。

(二) 原告ていは、平成二年四月一一日、被告ダイヤモンド保証との間で、本件消費貸借契約及び本件当座貸越契約上の各債務について、保証委託契約を締結し(以下「本件保証委託契約」という。)、右契約に基づき、同日、被告ダイヤモンド保証は、被告三菱銀行に対し、原告ていの本件消費貸借契約及び本件当座貸越契約上の債務について連帯保証をした(甲五、弁論の全趣旨)。

原告ていは、同年五月一一日、被告ダイヤモンド信用保証に対し、保証委託料として七三〇万二八二〇円を支払い、また振込手数料として六一八円を支出した(甲八、九、一〇の一、二、一一の一、二、二九。原告らと被告三菱銀行らとの間では争いがない。)。

(三) 原告てい及び原告鐡之助は、本件保証委託契約上の債務を担保するため、平成二年四月一一日、被告ダイヤモンド保証との間で、別紙第一及び第二物件目録記載の各不動産について、極度額を八億一四〇〇万円、根抵当権者を被告ダイヤモンド保証とする根抵当権設定契約を締結し(以下「本件根抵当権設定契約」という。)、右各契約に基づいて別紙登記目録記載の根抵当権設定登記をし、原告ていは、ダイヤモンド保証に対し、右根抵当権設定登記手続費用三四〇万五三八〇円を支払い、また契約書への収入印紙代として一〇万〇二〇〇円を支出した(甲一二ないし二六、二九)。

(四) 原告鐵之助、原告巍之助、原告珂久子及び原告護之助は、平成二年四月一一日、被告ダイヤモンド保証に対し、本件保証委託契約上の原告ていの債務につき、連帯保証をする旨約した(甲八、九。原告らと被告三菱銀行らとの間では争いがない。)。

5  本件保険契約の解約

原告ていは、平成一二年一月一二日の本件第二七回口頭弁論期日において、被告日本生命に対し、本件保険契約を解約する旨の意思表示をした(当裁判所に顕著である。)。

右解約の意思表示が有効であるとすると、原告ていは、被告日本生命に対して、三億一六三九万四五二五円の解約返戻金請求権を取得した(争いがない。)。

6  被告三菱銀行は、平成一一年九月二七日ころ、原告ていに対し、本件消費貸借契約及び本件当座貸越契約の利息を支払うよう書面で催告したが、原告ていがこれを支払わなかったので、原告ていは、本件消費貸借契約については平成一一年一〇月二七日以降、本件当座貸越契約については平成一一年九月二九日以降、期限の利益を喪失した(甲一四二の一、二、一五五の二、弁論の全趣旨)。

平成一二年二月一六日現在の本件消費貸借契約の借入元金は三億七〇〇〇万円、利息は五二二六万二四九二円、遅延損害金は一六〇三万六七一二円、本件当座貸越契約の借入元金は一億四六〇二万九五三一円、利息は二二万八八四六円、遅延損害金は七八九万七五九七円である(争いがない。)。

二  原告らの主張

1  本件保険契約締結の経緯

(一) 原告ていは、千葉市内に別紙第一及び第二物件目録記載の各不動産などを所有する資産家であり、平成元年一一月当時、既に高齢であったことから、原告ていの子供である原告鐵之助らは、原告ていに相続が発生した場合の相続税の負担について憂慮していたところ、被告日本生命日本橋総支社京橋営業部の保険外務員である豊島やよい(以下「豊島外務員」という。)は、原告巍之助に対し、相続対策となるよい保険がある旨の勧誘をした。

(二) 同年一二月二五日、豊島外務員と被告日本生命日本橋総支社京橋営業部部長田辺恒明(以下「田辺部長」という。)の両名は、原告てい宅において、原告らに対し、「資産家の相続対策ニーズへの共同スキーム」と題する書面(甲三二。以下「共同スキーム」という。)を示して、本件変額保険は、相続対策として新しく開発された保険であること、相続対策のための保険であるから法定相続人全員が加入することが必要であること、相続財産を減らすために負債を作ることが目的であるから保険料は銀行から融資を受けて一括払いするのがよいこと、右融資の利息の支払は、銀行から貸越による追加融資を受けるので現金を用意する必要はないこと、融資金の返済は、保険の運用実績に基づく解約返戻金をもって充てること、相続時には、一時払保険料のみが相続財産として評価され、また、保険の運用利回りが借入利率を常に上回るシステムとなっているので、年がたてばたつほど含み資産が残ること、債務が多ければ多いほど相続財産の評価を下げることができて相続税が減り、その結果相対的に相続財産がより多く留保されるものであることなどと説明し、平成二年一月中旬には、豊島外務員、田辺部長と被告日本生命の京橋営業部指導所長大野堅次(以下「大野所長」という。)が、同様の説明をした。

(三) 同年二月一三日、被告三菱銀行錦糸町支店の取引先第一課課長高橋俊雄(以下「高橋課長」という。)は、豊島外務員らに伴われて原告てい方を訪れ、原告らに対し、本件変額保険は相続対策として効果のあるものなので、被告三菱銀行も積極的に融資させていただくなどと述べて、本件保険への加入を推奨し、相続対策に協力できる旨原告らに申し向けた。

(四) そのため、原告ていは、本件変額保険への加入は自分自身に相続開始があった場合の相続対策として効果的であると考えるに至り、同年二月中旬ころ、本件保険契約の申込書を作成して契約の申込みをなし、その後、本件保険契約を締結した。

2  融資一体型変額保険契約とその危険性

(一) 変額保険契約は、従来から存在した定額保険とは異なり、払い込まれた保険料の運用のリスクを保険会社ではなく保険契約者に負担させる仕組みの保険であり、保険契約者から払い込まれる保険料中の積立金を特別勘定とし、他の資産と分離して株式、公社債等の有価証券等に投資して運用し、その運用成果により保険金額及び解約返戻金額等が増減されるものであるため、特別勘定の運用成績によっては解約返戻金額が払込保険料を下回ることもある、それ自体危険性の高い商品である。

(二) そして、本件変額保険は、銀行の融資と一体化したものとして相続対策に有効であるとして売り込まれた。すなわち、保険契約者である原告ていが死亡した場合に、相続人がこれを解約し、その解約返戻金の支払を受けて銀行からの借入金返済と相続税の支払資金とし、他方、銀行からの借入金相当額を相続財産における債務として相続財産から控除することにより、課税資産額の評価を低くし、相続人らが支払う相続税の負担を軽減させ、その結果相続財産がより多く留保されることをセールスポイントとして売られたものである。

本件では、被告日本生命及び被告三菱銀行は原告らに対する変額保険加入の勧誘において、相続対策を強調して保険加入を勧めた上、保険料支払のため本件の各融資を確約したのであるから、本件変額保険契約と本件の各融資とは目的と手段の不可分一体の関係にあるものというべきであり、被告日本生命と被告三菱銀行は、協力、業務提携をして本件変額保険の売り込みを行ったといえる。

(三) このような融資一体型の変額保険契約の場合、保険料を自己資金のみで調達する場合と比較して、以下のとおり危険性が高い。

(1)  借入金の利息が時の経過とともに増加するため、場合によっては、借入元利金が担保として提供された不動産の価格を超過し、契約者の財産が無に帰する可能性がある。

(2)  このように、契約者に過大な負担を生じさせるにもかかわらず、保険料の運用利回りと銀行の借入金利の変動により、契約者が被るリスクの予測は極めて困難であり、また判断もほとんど不可能である。

(3)  相続対策が達成されるか否かは、保険料の運用利回り及び銀行の金利、相続税の税率等の複雑な要因により決定されるものであって、相続対策が達成されるのは局限された場合でしかあり得ない。

(四) 加えて、本件において、被告日本生命が原告らに提案した融資一体型変額保険は、相続対策としては、本件勧誘時に示した当初の条件(共同スキームの前提である年九パーセントの運用利回り)が仮に続いたとしても、何ら効果がなく、かえって加入をしなかった場合と比較して相続財産を減少させるという構造的な欠陥を有するものであり、何ら相続対策にならないものであった。

なお付言すれば、原告らが加入した、相続人らが被保険者となって変額保険に加入する形態の相続対策では、被相続人自身が被保険者となる形態以上に、変額保険の運用が相当に好調で、借入金利との差が非常に大きくなければ相続対策にならないものである。

3  錯誤による無効

前記のとおり、変額保険は、相続対策としては極めて限られた場合にしか効果がないばかりか、かえって損失を被る可能性が高いものであるにもかかわらず、原告ていは、前記1のような豊島外務員らの勧誘行為によって、本件変額保険の払込保険料の運用益が、銀行金利を負担するマイナスを上回り、解約返戻金をもって借入金の返済と相続税の支払が可能であり、有効な相続対策となると誤信した結果、被告日本生命と本件保険契約を締結し、被告三菱銀行と本件消費貸借契約、本件当座貸越契約を、被告ダイヤモンド保証と本件保証委託契約、本件根抵当権設定契約を締結したものであるから、右各契約は、要素に錯誤があるものとして無効である。原告ていの締結した各契約が無効である以上、その余の原告らがした連帯保証契約等も、附従性により無効である。

4  詐欺による取消し

(一) 原告ていは、前記1の勧誘行為により、本来何ら相続対策とならない本件の融資一体型変額保険に加入することが有効な相続対策になるものと欺罔され、錯誤に陥り、本件の各契約を締結したものである。

(二) 原告ていは、平成六年一一月二四日、本件口頭弁論期日において、<1>被告日本生命に対し、本件変額保険契約を、<2>被告三菱銀行に対し、本件消費貸借契約及び本件当座貸越契約を、<3>被告ダイヤモンド保証に対し、本件保証委託契約及び本件根抵当権設定契約を、それぞれ取り消す旨の意思表示をした。

5  公序良俗違反による無効

原告ていに対する本件変額保険の勧誘行為は、原告らの変額保険についての無知に乗じて行われたものであり、原告らは、本件保険契約等を締結することが自己の資産を減少させることなく、相続税の支払を減少させる有効な節税手段となるものと誤信したものである。かかる違法性の強い勧誘行為に起因して締結された本件保険契約及び本件金銭消費貸借契約、本件当座貸越契約、本件委託保証契約、本件根抵当権設定契約及び本件連帯保証契約はいずれも公序良俗に反し無効である。

6  原告ていの主位的請求、その余の原告らの請求の内容

(一) 以上のように、本件保険契約、本件消費貸借契約、本件保証委託契約等は無効か又は取り消された。

(二) したがって、原告ていは、被告日本生命に対し、不当利得における悪意の受益者として支払済みの保険料三億六〇三二万二五〇〇円と平成二年四月一一日から支払済みまで年五分の割合による利息の支払を求める。

(三) また、原告らは、被告三菱銀行及び被告ダイヤモンド保証に対し何らの債務を負担していないことになるのでその旨の確認と、本件保証委託契約が存在しない以上本件根抵当権設定契約に基づく根抵当権設定登記も抹消される必要があるのでその抹消登記手続を求める。

(四) 原告ていは、被告ダイヤモンド保証に対し、不当利得における悪意の受益者として、原告ていが同社に支払った保証委託料合計七三〇万二八二〇円とこれに対する平成二年五月一一日から支払済みまで年五分の割合による利息の支払を求める。

(五) 原告ていは、被告らに、無効であるか取り消されるべき契約をさせられたことによる損害として、三五五〇万六一九八円(根抵当権設定登記手続等費用として支払った三五〇万六一九八円と弁護士費用三二〇〇万円の合計)の支払を求める。

7  不法行為(原告ていの予備的請求)

(一) 故意又は過失による欺罔

田辺部長ら被告日本生命の従業員及び高橋課長ら被告三菱銀行の従業員は、原告ていが本件変額保険に加入することが何ら相続対策にならないことを知りながら故意に相続対策になると偽って、又は、相続対策にならないことを過失によって知らずに相続対策になると申し向けて、原告ていをその旨錯誤に陥れて、本件保険契約、本件消費貸借契約、本件当座貸越契約、本件保証委託契約を締結させた。

(二) 法規違反の勧誘

本件勧誘当時、豊島外務員は、生命保険協会の変額保険販売資格を有しておらず、また、保険募集の取締に関する法律(以下「募取法」という。)一六条により不実の告知や重要事項の不告知が禁止されているにもかかわらず、田辺部長ら被告日本生命の担当者は、本件変額保険のリスク、本件相続対策の仕組みやリスクを告げなかっただけでなく、共同スキームで表示された条件のうち、借入元利金の計算方法が実際の借入れに用いられる方法とは異なっており、また、借入金利率と比較すべき変額保険の運用利回りは、実体利回り(払込み保険額に対し、どれだけの運用ができているか)を示すべきところ、名目利回り(特別勘定についての運用実績)を示すなど誤った表示をし、かえって本件相続対策及び本件変額保険の運用が安全確実であることを強調して説明しており、本件勧誘において、パンフレットなどの公式資料は一切使用されず、共同スキーム、エクセレントニュースなどの非公式資料のみが説明に用いられ、被告日本生命内の適切な社内チェックがされていなかった。また、右共同スキームは、募取法(二条、一四条)上、「募集文書図画」として規制されるべき文書であるところ、本件では規制の条件を満たしていないため使用できない文書であるのに勧誘時に使用されたなどの法規違反の勧誘行為をした。

(三) 説明義務違反

本件変額保険の特殊性及び融資一体型変額保険の危険性や保険会社には募取法一六条、二二条によって保険契約の契約条項の重要な事項について法的説明義務が課せられていることなどにかんがみると、本件変額保険を勧誘した被告日本生命の田辺部長らには、信義則上、(1)  本件変額保険契約の内容及びその特徴(運用リスクが存在し、満期金・解約返戻金が払込保険料を下回る可能性があること。)、(2)  相続対策になり得る仕組み、(3)  本件変額保険契約が相続対策にならない場合があること、(4)  負債の増加により当該相続財産自体を失う危険性のあること、(5)  変額保険加入時における資産を基準とした、保険に加入した場合のメリットの具体的試算などついて、具体的かつ詳細に説明すべき義務を負っているものというべきである。しかるに、被告日本生命の田辺部長らは、本件変額保険の勧誘及び本件保険契約の締結に当たり、原告ていに対し、何ら右の説明をせず、ただ相続対策になることのみを強調して勧誘し、原告ていをして本件保険契約、本件消費貸借契約を締結させ、被告三菱銀行の高橋課長も田辺部長らの勧誘行為に同調した。

(四) 断定的判断の提供

田辺部長ら被告日本生命の従業員は、本件変額保険の特別勘定の運用の方が銀行利息より常に上回るので、原告ていが本件変額保険に加入すれば、銀行からの借入金は保険金で完済できる旨の将来の運用についての断定的判断の提供をして勧誘した。また、高橋課長ら被告三菱銀行の従業員もこのような断定的判断の提供に同調し、本件変額保険への加入、被告三菱銀行からの借入れを勧誘した。

(五) 原告ていの損害は次のとおり、三億〇九一九万二一七一円であり、被告らはこれを支払うべきである。

(1)  支払保険料合計額と解約返戻金合計額の差額四三九二万七九七五円。

(2)  被告ダイヤモンド保証に支払った保証委託料七三〇万二八二〇円及び根抵当権設定登記手続等費用三五〇万六一九八円。

(3)  原告ていが本件消費貸借契約により借り入れた三億七〇〇〇万円の利息及びその利息支払のために締結した本件当座貸越契約に基づく借入れ及びその利息とこれらについての遅延損害金二億二二四五万五一七八円。

(4)  弁護士費用 三二〇〇万円

三  被告らの主張

1  被告日本生命

(一) 本件における勧誘について

田辺部長、大野所長、豊島外務員が本件変額保険に加入することによる相続対策を説明したことは認めるが、変額保険による相続対策の効果が一般的・普遍的にあることを強調するなど、原告らが主張するような説明はしていない。また、説明の際には、共同スキームのほか、変額保険のパンフレット、設計書、アセットなども用いており、経済状況の変動により解約返戻金額が変動することなど本件変額保険のリスクも説明している。被告日本生命は、原告らから依頼されて被告三菱銀行を紹介したものにすぎず、融資一体型変額保険というものを販売したわけではない。原告らの中には銀行員もおり、また、養子縁組をするなど相続対策を現に行っていたから、当時の経済状況や変額保険に関する知識等を十分有していたはずである。

(二) 本件変額保険について

本件変額保険は、生命保険として理解する限り、死亡保険金の最低額の保証はあり、危険性が高いと一概に評価することはできない。そして、被告日本生命と原告ていとの間で締結された本件変額保険は、融資と一体化したものではない。本件において原告のいう相続対策が失敗したのは、いわゆるバブル経済の崩壊によるものである。

加えて、相続対策として変額保険を用いる場合でも、その利用目的は原告ら主張のような限定されたものではなく、場合により利用目的は異なるものであり、例えば、相続開始時に相続税支払に充てる現金が手元に用意できるという意味での経済的利益も存在する。

(三) 被告日本生命の注意義務について

変額保険を相続対策として利用する提案は、保険自体の内容の説明ではないから、生命保険会社が保険勧誘の際に説明を義務付けられている事項ではなく法的な説明義務はない。共同スキームの書面については、「募集のため又は募集を容易ならしめるために使用」する目的で作成されたものではないので、募取法一四条違反の問題は生じない。そもそも同条は説明の補助資料までをも規制する趣旨ではない。

また、原告らの主張する試算等は、税務等に関してかなり専門的な知識と労力を要するものであり、保険会社の営業職員が右試算等を作成することは一般的に期待できない。また、右試算のためには、相手方の資産状況を正確に把握する必要があるところ、人的関係の薄い単なる営業職員にそれらを告げることは期待できない。本件でも被告日本生命は原告ていの資産状況を知らなかった。したがって、保険会社の営業職員に、契約締結前の顧客から資産状況の情報を得て正確な相続対策を立てることを期待することは困難であって、原告らのいうような説明義務はないし、原告らからこれを求められたこともない。また、共同スキームの書面の計算内容は、メリット・デメリットが分かりやすいよう、いくつかの要素を省いている。

(四) 解除の無効

原告ていは、本件保険契約の無効等が認められない場合には予備的に本件変額保険契約を解約する旨の意思表示を行っているが、このような意思表示は解約の意思が明確でないから、実体法上の効果を生じさせない。

(五) 消滅時効の成立

原告らは、変額保険の運用実績がマイナスであることを、平成三年五月一日作成のN・L・I(ニッセイ・ライフ・インフォメーション)が送達された平成三年五月末には知ったから、その時点で原告らは損害の発生を知っていたのであり、本件訴えの提起が平成六年九月であることから、不法行為に基づく損害賠償請求権は短期消滅時効により消滅している。

(六) 仮に不法行為が認められるとしても、本件における各事情を考慮すれば、原告らの過失は大きく、過失相殺がされるべきである。

2  被告三菱銀行ら

高橋課長が被告日本生命の紹介により、平成二年の冬季に原告てい方を訪問したことはあるが、本件変額保険への加入を勧めたことはなく、被告三菱銀行、被告ダイヤモンド保証は、本件変額保険加入につき何ら勧誘行為はしていない。なお、被告日本生命と被告三菱銀行との間に協力又は業務提携関係は存しない。

また、被告三菱銀行、被告ダイヤモンド保証は、本件変額保険加入に当たり何らの説明義務はない。そもそも、本件保険契約と被告三菱銀行からの融資は一体を成すものではなく、本件金銭消費貸借契約についても、被告三菱銀行が勧誘したわけではなく、原告ら側の申込みに基づいて締結されたものである。

仮に、不法行為が認められるとしても、本件における各事情を考慮すれば、過失相殺が適用されるべきである。

三  争点

1  本件保険契約、本件消費貸借契約、本件当座貸越契約、本件保証委託契約は、(一) 錯誤により無効か(争点1)、(二) 詐欺により取り消されたか(争点2)、(三) 公序良俗違反により無効か(争点3)。

2  本件保険契約締結、本件消費貸借契約締結等の過程に原告ら主張の不法行為が認められるか(争点4)。

3  不法行為責任が認められる場合、(一) 損害賠償請求権は時効で消滅したか(争点5)、(二) 過失相殺は認められるべきか(争点6)、(二) 損害賠償額はいくらか(争点7)。

第三当裁判所の判断

一  変額保険

証拠(甲四九、五一の一ないし三、五三の一ないし五、五七、五八)並びに弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。

1  変額保険の性質

変額保険とは、保険会社が保険契約者から払い込まれる保険料の一部を積立金とし、これを特別勘定として他の資産とは分離した上で株式等に投資して運用し、その運用成果を保険金額等に反映させ、保険金額等を増減させるという仕組みの生命保険であり、我が国では昭和六一年一〇月に発売が開始された。この変額保険は、死亡保険金、高度障害保険金については基本保険金額が保証されているものの、満期保険金額や中途解約した場合の解約返戻金額は、積立金特別勘定の運用の成績により左右され、一定額の保証はないという点に特徴がある。すなわち、これまでの生命保険は、保険契約者が支払う保険料の運用リスクを保険会社が負担し、その運用成績のよしあしにかかわらず、保険契約者は一定額の保険金や解約返戻金を取得できる仕組みになっていたのに対し、変額保険は、その運用リスクを保険契約者に負わせ、その運用の成績によって保険契約者が受け取る保険金額や解約返戻金額を変動させるというものであって、運用成績がよければその利益が保険金額や解約返戻金額の増額という形で保険契約者に還元されるが、逆に運用成績が悪ければ保険金額や解約返戻金額の減額という形で保険契約者がリスクを負担するものであり、いわゆるハイリスクハイリターンの金融商品に類似する性格を有している。好況時の経済情勢の下で物価が上昇しつつある局面においては、インフレ対策としての効果があるとされる。

2  変額保険の募集についての規制

右のように、変額保険の仕組み等はこれまでの生命保険と大きく異なるところがあるため、販売開始前の昭和六〇年五月、保険審議会は、変額保険の募集に当たっては、顧客に対し変額保険の仕組みを、契約者が資産運用のリスクを負担し保険金額が減少する可能性があることを含め十分説明する必要があること、これまでの定額保険の募集に必要とされている知識に加えて変額保険を正しく販売するための業務知識が求められることから、変額保険の募集のための特別の資格認定制度及び変額保険の募集知識や募集方法についての教育体制を整備することが適当であることを答申した。右答申を受けて、昭和六一年五月一六日、社団法人生命保険協会は、変額保険の特性にかんがみ、生命保険募集人について、一定水準以上の専門知識及び技能を取得させることが必要であるとの認識から、自主運営制度として、変額保険についての販売資格制度を創設したが、右販売資格制度においては、従来の定額保険の募集に必要とされている資格である初級課程試験合格に加え、中級専門課程試験に合格した者が、二日間以上、かつ、一〇時間以上の変額保険の販売にかかる研修を受けた上で、変額保険販売資格試験に合格し、販売資格者として生命保険協会に登録されて初めて販売資格を取得することができることとなっている。

そして、昭和六一年七月一〇日付蔵銀一九三三号「変額保険募集上の留意事項について」と題する大蔵省通達により、将来の運用成績につき断定的判断を提供すること、特別勘定の運用成績につき、募集人が恣意に過去の特定期間を取り上げ、将来を予測する行為、保険金額(死亡保険金については最低保障を上回る金額)あるいは解約返戻金額を保証する行為を禁止する行政指導がされた。

なお、本件に関与した被告日本生命の職員の変額保険販売資格収得時期は、田辺部長、大野所長が昭和六一年一〇月一日、豊島外務員が平成二年五月二五日であった。

3  相続対策としての変額保険

変額保険の発売が開始された当時、我が国ではいわゆるバブル経済といわれる中で土地の価格等が高騰しており、相続が発生すると多額の相続税が課せられるようになったことから、資産を有する者の中には、様々な相続対策、節税対策がとられるようになったが、その一つとして、我が国の生命保険各社は、銀行から融資を受ける方法による変額保険への加入を勧め、マスコミの一部もこれを有効な相続対策の一つとして取り上げたこともあった。

相続対策として変額保険に加入する場合、被保険者を被相続人となるべき者とするタイプ(以下「Aタイプ」という。)と被保険者を相続人となるべき者とするタイプ(以下「Bタイプ」という。)とがある。被保険者を被相続人とするAタイプでは、相続開始時に保険金が支払われることになるから、保険金を相続税の支払に充てることができるというメリットがあるが、被保険者を相続人とするBタイプにおいては、相続発生時までに保険事故(被保険者の死亡)が発生することは予定されておらず、通常は、相続発生時に、保険契約者(被相続人)の地位を承継した相続人が解約権を行使することによって解約返戻金の支払を受け、これを相続税の支払に充てることを予定しているものである。

二  本件の各契約締結に至る経緯等

前記前提となる事実に証拠(甲五ないし九、一〇の一、二、一一の一、二、一二、二九、三一ないし三五、七五、七七ないし八一、一一七、一一八、乙一、六ないし一〇、二七、丙一、証人竹内淳一、同田辺恒明、同高橋俊雄、原告深山巍之助、原告深山護之助)並びに弁論の全趣旨を総合すると、本件の各契約締結に至る経緯等について、以下の事実を認めることができる。

1  原告ていは、明治四四年九月二四日生まれの女性であり、長男である原告鐵之助(昭和七年一二月一三日生)と同居している。原告巍之助(昭和一七年四月一四日生)は、原告ていの三男で千葉興業銀行に勤務しており、原告珂久子(昭和一〇年九月四日生)は、原告ていの長女、原告護之助(昭和一九年五月一六日生)は、原告ていの四男である。

原告ていは、千葉市内などに多数の土地や建物を、単独で、あるいは他の者との共有という形で所有しており、平成二年当時、同女の相続が開始すると、その課税財産価格は三億円を超え、推定課税額は全体で六八〇〇万円ほどであった。

2  昭和五七年に、原告ていの夫であり、その余の原告らの父である深山正敏が死亡したが、その際に相続税の支払に苦労したことがあったため、原告鐵之助、原告巍之助、原告護之助は、原告ていについて相続が発生した場合の相続対策として、それぞれの配偶者を原告ていの養子とした。

3  原告巍之助は、平成元年一一月当時、千葉興業銀行東京支店内の国際部に勤務していたが、当時、右支店には、被告日本生命日本橋総支社京橋営業部所属の豊島外務員が保険の勧誘のため出入りしていた。原告巍之助は、同年一一月ころ、顔なじみとなっていた豊島外務員が右支店に来た際、同女に対し、母親である原告ていの相続が起きたときは相続税を支払うのが大変である旨話したところ、豊島外務員は、相続対策のためによい保険があると言ったが、その場ではその内容につき具体的な説明はしなかった。

4  その後、一週間ほどして、原告巍之助の勤務先を豊島外務員と被告日本生命日本橋総支社京橋営業部の田辺部長が訪れ、変額保険は保険金額等が特別勘定の資産の運用実績に基づいて増減するものであることを説明しているエクセレント・ニッセイ変額保険(終身型・有期型)のパンフレットと共同スキームを用いて、変額保険による相続対策の仕組みについて説明を行った。この説明は、専ら田辺部長が行い、共同スキームを示す際には、田辺部長は、右書面は銀行に向けた説明のために作った資料だが、特に原告巍之助には見せる旨申し向けた。右共同スキームには、被相続人が保険契約者兼被保険者となるAタイプの場合と被相続人が保険契約者、相続人が被保険者となるBタイプの場合とに分けて、相続対策になる仕組みが図入りで説明されていた。

田辺部長は、原告巍之助に対し、本件変額保険は相続対策のために新しく開発された一括払込みの保険であること、相続対策のためにはうまく負債を作ることが必要なので、銀行からの借入金で保険料を支払い、借入金の利息もまた借り入れて支払うのがよいこと、相続発生時に相続資産として計上されるのは保険の解約返戻金ではなく、払込保険料であるため、払込保険料に加算される配当金が含み資産となり節税になること、銀行からの借入金は、相続発生時に保険を解約し、その解約返戻金で返済すればよいので一円も使わずに相続対策ができること、原告ていは高齢なので被保険者とはなれず、被保険者を相続人となる者にするBタイプで行うことになることなどを説明した。

また、田辺部長は、原告巍之助に対し、前記共同スキームの、運用利回りを九パーセント、銀行の借入金利を六パーセントとしてシミュレーションをしたグラフ(甲第三二号証三枚目右側のグラフ)を示し、解約返戻金の受取額と一時払保険料との差が含み資産になり、また、借入金の相続発生時における元利金と借入金、すなわち一時払保険料との差が債務控除となり、両者が相まって節税の効果を上げることができる旨を説明し、また、過去には運用利回りが一二パーセントのときもあり、現在でも九パーセントを確保しており、銀行借入金利である六パーセントを上回っているが、解約返戻金の額は、将来経済情勢で変わることがあり得ることや、加入後、当初の一、二年は手数料の支払などもあるため運用利回りと貸付金利率の逆転現象もあり得るが、その期間を過ぎればそのようなことはないであろうと述べた。

5  原告巍之助は、外国為替業務の経験が長く、当時、変額保険について格別の知識は有しておらず、また、生命保険会社と提携した変額保険に対する融資を扱った経験もなかったため、田辺部長が説明した変額保険の仕組みについては十分な理解には至らなかったが、解約返戻金と払込保険料との差が含み資産になるという相続対策の仕組みについては納得するものがあり、解約返戻金額が経済情勢で変わることがあるとの説明も理解した。相続対策になると考えた原告巍之助は、他の兄弟らに勧めようと考え、田辺部長に他の兄弟らにも説明してもらうことにした。

6  平成元年一二月二五日の夕方、田辺部長と豊島外務員は、原告巍之助を勤務先に迎えに行き、一緒に原告てい宅へ行き、そこで、あらかじめ集まっていた原告ら全員に対し、三時間ほどかけて説明を行った。その説明は、田辺部長が主として行った。

その際には、資料として、パンフレット、共同スキーム及び事前に田辺らが巍之助から原告らの年齢等を聞き出して保険料を三億円として計算した、原告ら(原告ていを除く)が被保険者となった場合の設計書が示され、本件の保険は相続対策のために銀行と提携して共同で開発した相続対策の保険であること、深山家の場合は、原告ていは高齢で被保険者となれないので、相続人となるべき者が被保険者となることを、共同スキームのBタイプについて説明した部分を示しながら説明した。

さらに、田辺部長は、共同スキームを示しながら、相続対策になる仕組みとして、払込保険料を銀行から融資を受けて支払い、右融資の利息も銀行から借り入れて支払うこと、これらにより銀行に借金ができ、借金ができれば相続時に相続財産から控除されること、他方、保険の権利は解約した場合受け取る解約返戻金の額ではなく、払込保険料が相続資産の価値となるから、その差について相続税が課されず、有効な相続対策となること、この相続対策は、銀行の元利金と保険会社の運用の解約返戻金の差が出るところに意味があり、時がたてばたつほど差が開くであろうから、原告ていが長生きすればするほど効果が高まること、相続対策なので、法定相続人全員が加入しなければならないことを説明した。

原告護之助が借入金をどのように返済するのかと質問したところ、田辺部長らは、銀行の元利金よりも保険の運用による解約返戻金が上回るので、銀行の借入金は解約返戻金の中から返済し、余ったものを相続税の支払の一部に充てればよいと説明したが、具体的にどのような運用で、どのような効果があるのか、数字をあげた説明はなかった。

田辺部長の説明を受けて、原告巍之助と原告鐵之助は、変額保険に加入することは相続対策になると考えたが、原告護之助と原告珂久子が納得しなかったことから、もう一度説明の機会を設けることとなった。なお、原告巍之助は、自分を被保険者とする生命保険には既に加入しており、本件変額保険への加入目的はもっぱら相続対策にあった。

7  平成二年一月二〇日、豊島外務員、田辺部長は、被告日本生命日本橋総支社京橋営業部の大野所長を伴って、再度説明のため原告てい宅を訪れた。この際には、「修正版資産家の相続対策ニーズへの共同スキーム」と題する書面(甲三三。以下「修正共同スキーム」という。)、エクセレントニュース、資料(甲三五)がホッチキスでとめられたものが渡された。このときは主として大野所長が説明を行い、修正共同スキームを示して、相続対策になる仕組みを再度説明した。その際、銀行からの借入金の返済についての質問が出たが、エクセレントニュースを示すなどして過去の運用利回り実績などを説明した。右エクセレントニュースには、変額保険特別勘定の運用利回り実績が表示され、平成元年一月加入契約した変額保険の運用実績が一五・四三パーセントと記載されていた。

原告護之助は、母親である原告ていが死亡することを前提とした保険に加入することには抵抗があったが、大野所長らは、相続人全体のためのものであるから、原告護之助一人が入らないわけには行かないのではないかと答えたため、原告護之助も、自分の反対のために原告巍之助らが相続対策をとれないのでは困ると考え、やむなく本件変額保険への加入を了承した。

8  平成二年一月三〇日、豊島外務員に伴われた被告日本生命の診査医が原告鐵之助方を訪れ、原告鐵之助と原告護之助が健康診査を行った。また、同年二月のはじめには、豊島外務員に伴われた診査医が原告巍之助の勤務先を訪れ、健康診査を行ったが、その際、原告巍之助は髄膜炎の後遺症のため投薬を受けており、被保険者になれないことが分かり、原告巍之助の妻である洋子が被保険者になることになった。同じころ、原告珂久子も千葉県市川市の自宅で健康診査を受けた。

9  平成二年二月一一日、田辺部長と豊島外務員は、原告てい宅を訪れ、原告鐵之助、原告巍之助、原告珂久子、原告護之助がそろった席で本件変額保険契約書の生命保険契約申込証が作成された。この時点では、保険金額、保険料及び申込日の欄は空白であった。その際、豊島から原告らに、「アセット」と題する冊子と変額保険の約款等が記載された「ご契約のしおり」と題する冊子が渡された。

申込証の作成後、田辺部長は、原告らに対し、本件変額保険の保険料支払のための借入れは、被告日本生命の方でも銀行を紹介できるが、原告巍之助の勤務する千葉興業銀行ではどうかと提案したところ、原告巍之助は、千葉興業銀行は被告日本生命と融資の提携はしていないし、自分の勤め先の銀行で融資を受けるのはかえっていろいろ面倒なことがあるので、被告日本生命の方で紹介する銀行でお願いする旨答えた。

10  そこで、田辺部長は、被告三菱銀行錦糸町支店の濱副支店長に連絡を取り、原告らに融資の説明をしてもらうこととした。濱副支店長は、同支店の高橋課長に、保険料支払資金の借入れを希望する人がいるので、借入れについての必要書類の説明をして、貸出しを検討するよう指示した。

11  平成二年二月一三日、田辺部長は、高橋課長と被告三菱銀行錦糸町支店取引先第一課課長代理岡田孝(以下「岡田代理」という。)の二人を伴って、原告てい宅を訪れた。原告巍之助は、仕事のため遅れたが、原告珂久子を除く他の原告らは全員そろっていた。高橋課長らは、借入れの方法などを説明し、融資額を決定するために担保物件の査定が必要なので原告らの所有する不動産の登記簿謄本などを準備するようにいった。

12  平成二年三月三〇日、岡田代理は、原告てい宅を訪問し、原告てい、原告鐵之助は、被告三菱銀行からの借入れをするについて必要な書類(甲五ないし九、一二)に署名、押印した。また、平成二年四月初め、原告珂久子と原告護之助は、原告てい宅で、岡田代理から、本件連帯保証契約の契約書等への署名押印を求められた。原告護之助は、これを断ろうとしたが、岡田代理が、原告護之助も保証人にならないと、融資ができず、相続対策のための保険加入そのものができなくなるといったので、やむなく署名押印した。原告巍之助は、その後に、自ら被告三菱銀行錦糸町支店に赴き、必要書類に署名押印した。

13  前項の契約書に基づき、原告らと被告三菱銀行及び被告ダイヤモンド保証は、平成二年四月一一日付で、被告三菱銀行と原告ていとの間の本件消費貸借契約、被告三菱銀行と原告ていとの間の本件当座貸越契約、被告三菱銀行と原告鐵之助との間の、本件当座貸越契約上の債務を保証するための連帯保証契約、被告ダイヤモンド保証と原告ていとの間の、本件消費貸借契約及び本件当座貸越契約についての本件保証委託契約、原告鐵之助、原告巍之助、原告珂久子及び原告護之助とダイヤモンド保証との間の、本件保証委託契約上の債務を担保するための各連帯保証契約、右保証委託契約上の債務を担保するための原告てい及び原告鐵之助とダイヤモンド保証との間の本件根抵当権設定契約をそれぞれ締結し、被告三菱銀行は、三億七〇〇〇万円を原告ていに貸し付けた。

原告ていは、前同日、ダイヤモンド信用保証に対し、本件根抵当権設定契約に基づく登記手続費用三五〇万五三八〇円を支払い、同年五月一一日、保証委託料として七三〇万二八二〇円を支払った。

14  平成二年四月一一日、原告ていは、被告日本生命に対し、本件保険契約の保険料合計三億六〇三二万二五〇〇円を支払い、被告日本生命は、平成二年五月一日付で、原告ていと本件保険契約を締結した。

15  本件の勧誘に使用された共同スキームには、説明文の中に「貴行」の言葉が用いられており、銀行向け説明書の体裁をとっているが、相続対策の仕組みとして、銀行は、土地を担保として資産家に生命保険の一時払保険料相当額を貸し付ける(当座貸越)、資産家は、当該借入金で生命保険に加入する、本件の場合の加入態様であるBタイプについては、資産家本人が契約者となり、妻又は子供を被保険者として変額保険に加入する、資産家本人の相続により妻(又は子)が当該生命保険の権利を相続する、その際、生命保険の相続税評価額=一時払保険料となる、これにより、年数が経過するにつれ、保険の現在価値(解約時受取額)と相続税評価額のかい離(相続税課税の対象外となる「含み」メリット)が大きくなる、借入れによる債務控除と合わせ、相続税評価を下げ、相続税の節税を図ることができると説明され、Bタイプの資産家の相続対策メリットとして、資産家本人が高齢、病気等で生命保険に加入できない場合でも、妻又は子供を被保険者とすることにより相続対策を図ることができる、相続した生命保険を引き続き継続することにより(保険契約者を妻又は子に変更)、二次以降の相続対策が図れると説明されている。また、共同スキームの三枚目右側には、生命保険の相続税評価額が一時払保険料額であるため、運用により増加した保険解約時の解約返戻金受取額から税金を控除した金額と一時払保険料額との差額が生命保険の評価減メリットとなり、借入金の利息分による債務控除メリットが存することを、遺産総額(評価額)一〇億円、相続人が、被相続人の妻と子供三人の場合に、終身型保険料一時払いタイプで基本保険金が三億円、保険料一億〇九八七万五〇〇〇円の変額保険(資産家本人が契約者となり、妻が被保険者になるBタイプ)に加入し、当座貸越契約により利率年六パーセントで銀行から融資を受け、変額保険の特別勘定の運用利回りを九パーセント想定した前提条件のもとでシミュレーションしたように説明している。もっとも、右共同スキームには、右のシミュレーションは特別勘定の運用利回り九パーセントと想定したものであり、運用実績により変動(上下)するので、将来の支払額を約束するものではないとの記載があるし、相続対策のメリットの説明がされているが、どのような条件の下でメリットがあるのか、どの程度のメリットがあるのかなどの具体的な記載はない。また、修正共同スキームは、銀行からの借入利率を七・三パーセントとしてシミュレーションしたように、共同スキームを修正したものである。

この共同スキームは、平成元年の夏ころ、当時、被告日本生命日本橋総支社の業務企画課長であった竹内淳一(以下「竹内課長」という。)が社内研修用の資料として作成した「相続対策としての生命保険の活用」と題する書面(甲一一七、一一八)の一部である。竹内課長は、当時相続対策のために銀行から保険料の融資を受けて変額保険に加入するという形で変額保険が販売されていたものの、相続対策の仕組みは、様々な条件が前提として存在しているので、これを理解させる目的で、基本的には、被告日本生命の職員に説明するために作成したが、顧客である資産家についている税理士や取引先銀行への説明にも使えるように作成した。竹内課長が作成した資料の他の部分(甲一一八)には、相続対策のために銀行から融資を受けて変額保険に加入することの留意点として、変額保険の運用利回りと借入金利に一定の差をキープする必要があること、将来にわたり契約者本人と被告日本生命、融資先の銀行の連携が必要であることが記載されていた。

三  変額保険の相続対策としての有効性

1  原告らの主張にかんがみ、まず変額保険への加入することによる相続対策の有効性について検討する。

ここで相続対策として効果があるといえるためには、単に相続対策をとったことによって相続発生時に相続人が負担すべき相続税が軽減するというだけでは足らず、銀行に対する借入金利や解約返戻金に課せられる所得税など相続税以外の負担の増減を差引計算して、相続対策をとらなかった場合より相続対策をとった場合の方が相続人に残る資産が大きいといえなければならない。相続対策をとったことによって相続税額が減少してもそれによって他の負担が相続税の減少額を超えるほどに大きければ、相続対策をとる意味がないからである。

2  前記一、二の認定事実に弁論の全趣旨を総合すると、本件のように、被相続人となるべき者が保険契約者になり、相続人となるべき者が被保険者になるBタイプの形式によって変額保険に加入し、相続開始時に被相続人の保険契約上の地位を承継した相続人が保険契約を解約して解約返戻金を取得するという方法によった場合の相続対策上のメリットは、相続開始時の変額保険の税務上の評価がその時点での解約返戻金の額によってではなく払込保険料額によって評価されるため(相続税法二六条一項ただし書)、解約返戻金の額が払込保険料を上回っているときには、相続税課税の対象にならない含み資産が生じるとともに、払込保険料を支払うために銀行からの融資を受けた元利金の債務全額が相続債務となる結果、相続財産の税務上の価額を実際の価額よりも圧縮することができる点にある。このほかに、経済状況が好調であり、物価全体が高騰しているような状況の下では、特別勘定分の運用成績がよくなって保険金額や解約返戻金額が増加するであろうから、インフレ対策となって相続財産の評価額の上昇に伴う相続税増大への対処にもなり得るし、相続開始時に保険契約を解約して解約返戻金を相続税の支払に充てることができるというメリットもあるが、これらは副次的なものである。

3  右のように、銀行から融資を受けて変額保険に加入する方法によって有効な相続対策をすることのポイントは、含み資産が生じ、相続財産の圧縮が起こることにあるから、少なくとも解約返戻金額が払込保険料額を上回っている必要がある。

しかし、解約返戻金は、その額が払込保険料を上回っている場合には一時所得として課税の対象となり、所得税・住民税が課せられることになるので、課せられる所得税・住民税を考慮する必要があるところ、これは解約返戻金を受け取る者の他の所得金額によって異なるから一律にはいえない。また、相続財産に対する相続税の割合は、相続財産の価額や相続人の人数、相続人の中の配偶者の有無などによって異なるから、相続財産を圧縮することによってどの程度の節税になるかは、これらの条件を考慮しなければならない。そして、最終的には、税引き後の含み資産による利益と相続財産を圧縮することによって得られる相続税軽減の利益が銀行に対する金利負担を超えているときに相続対策として効果があったことになる。極めて単純化していえば、税引き後の解約返戻金額と銀行に支払う元利金が等しければ、含み資産分を圧縮しただけ相続税が軽減されるということになり、税引き後の解約返戻金が銀行に支払う元利金を下回っていれば、含み資産を圧縮したことによる相続税の軽減額と銀行への元利金のうち解約返戻金額を超えた額を比較することにより、相続対策として効果があるか否かが定まることになる。

相続対策として有効か否かは右のような様々な要素を勘案しなければならず、特別勘定の運用利回りと銀行に支払うべき金利とを比較して単純に論ずることはできない。特に、特別勘定として運用に回されるのは払込保険料の一部であることから、特別勘定の運用利回りが単に銀行の借入金利を上回っているというだけでは相続対策として効果があるということにはならない。

しかしながら、以上のような様々な要素によって異なってくるとはいえ、相続対策として有効となるか否かについて最も重要な意味を有するのは、特別勘定の運用利回りと銀行の借入金利との関係であることは明らかである。この点について、証人田辺は、相続対策として有効になるためにはおおむね二パーセントのかい離が必要、すなわち、運用利回りが銀行の借入金利よりもおおむね二パーセント上回っていることが必要と証言している。また、甲第一三四号証によれば、原告護之助が共同スキームに示されたのとほぼ同じ条件、すなわち、相続財産の課税価格を一〇億円、払込保険料を一億〇九八七万五〇〇〇円、特別勘定の運用利回りを九パーセント(一〇年後の税引前解約返戻金額二億一七二三万円)、被保険者には被相続人となるべき保険契約者の妻がなり、相続財産の価格が年五パーセントの割合で上昇することを前提にシミュレーションした結果によると、相続対策として効果がある銀行金利はほぼ七パーセントという結果が出たことが認められる。これらによれば、相続対策として有効になるためには、特別勘定の運用利回りが銀行金利よりもほぼ二パーセント上回っていることが必要と考えられる。

4  右にみたように、Bタイプで変額保険に加入することによって相続対策の効果を上げるには、相続財産の規模の程度、解約返戻金を受け取る者の年収等諸々の要素を勘案しなければならないが、少なくとも特別勘定の運用利回りが銀行からの借入金利を一定の差をもって上回るという条件が満たされる必要があるといえ、借入金利が高ければ、それだけ右の条件を満たすことが難しくなるが、この条件を満たすときには、それなりの相続対策の効果を得られるものということができる。

原告らは、共同スキーム、修正共同スキームで示された条件において銀行から融資を受けて保険料を支払う形での変額保険の加入は、いわゆるバブル経済崩壊などの現象の有無にかかわらず、もともと相続対策となり得なかった旨主張するが、被告日本生命の担当者の説明の仕方に問題があったことは後述のとおりであるが、前記の認定によると、共同スキーム、修正共同スキームは、相続対策の仕組みの説明として用いられたものにすぎず、本件変額保険が共同スキーム、修正共同スキームの条件で販売されたというわけではない。

四  原告ていを除くその余の原告らの請求及び原告ていの主位的請求について

1  錯誤による無効について(争点1)

原告らは、原告ていは、田辺部長、豊島外務員らの説明により、本件変額保険の特別勘定の運用益は銀行に対する金利負担を上回り、解約返戻金をもって借入金の返済と相続税の支払が可能となり、その結果相続人となるべきその他の原告らに残る財産が確実に多くなると誤信した結果、本件保険契約やそのための本件消費貸借契約等を締結したものであり、右の点について誤信しなかったら右の各契約は締結しなかったものであるから、右各契約は錯誤により無効であると主張する。

しかしながら、前記認定によれば、本件において、本件各契約を締結するか否かを実質的に判断したのは、原告ていの子供らであるその余の原告ら、特に原告巍之助であるところ、その原告巍之助は、田辺部長らによる説明によって、相続開始時の変額保険の税務上の評価がその時点での解約返戻金の額によってではなく払込保険料額によって評価されるため、解約返戻金の額が払込保険料を上回っているときには、相続税の課税対象にならない含み資産が生じ、他方、払込保険料を支払うために銀行からの融資を受けた元利金の債務全額が相続債務となる結果、相続財産の税務上の価額を実際の価額よりも圧縮することができる点に相続対策としての意味があることや、変額保険の特別勘定の運用利回りは、経済状況の変動によって変わり得ることを理解していたことは前記二の認定のとおりである。

そうすると、原告らは、本件変額保険に加入することによって相続対策の実を上げられるのは、特別勘定の運用によって増加した解約返戻金額が払込保険料額、より正確にいえば、保険料を払い込むために受けた融資額を上回ることが必要であり、他方、特別勘定の運用によっては、解約返戻金額が払込保険料額や融資の元利金を下回ることもあり得ることは知っていたといわざるを得ない。そうだとすれば、原告らは、特別勘定の運用成績いかんによっては本件変額保険への加入は有効な相続対策とはならないこともあり得ることを知っていたものといわざるを得ず、原告ら主張のような錯誤があったとは認め難いというべきである。

なお、原告らは、本件保険契約締結に至るまで、被告日本生命の田辺部長らから本件変額保険の解約返戻金が払込保険料を下回ることがあるなどの説明を受けたことはなく、資料としては共同スキームしか見せられておらず、本件変額保険のパンフレットも見せられなかったと主張し、右主張に沿う原告巍之助、原告護之助の各供述がある。しかしながら、本件のような高額な生命保険への勧誘がされているのに、当該生命保険の何たるかを説明されなかったというのは不自然であるし、そのパンフレットもなしに長時間をかけて田辺部長らから説明を受けたとは考え難いところである。また、変額保険の説明がなければ、なにゆえに解約返戻金が払込保険料を上回ることがあるのか、なにゆえに含み資産が生ずるのかも理解できないはずである。なぜなら通常の定額生命保険では解約返戻金が払込保険料を上回ることはあり得ないからである。本件変額保険の説明を受けなかったとする原告巍之助、原告護之助の前記供述は、信用し難いものといわざるを得ない。

また、田辺部長や大野所長らが、平成元年一二月二五日や平成二年一月二〇日の説明において、被告日本生命の変額保険の過去の運用利回りは借入金利を上回っていることを資料をもって説明していることは前記二で認定したとおりであるが、右は過去の事実をもって将来の見通しを示唆したものにすぎず、これをもって将来も運用利回りが借入金利を上回ることが確実である旨の断定的判断を提供したものとはいい難い。

2  詐欺による取消しについて(争点2)

原告らは、被告日本生命の田辺部長らにより、本来何ら相続対策とならないにもかかわらず、銀行から融資を受けて本件変額保険に加入することが有効な相続対策になるものと欺罔された結果、原告らは、本件の各契約を締結したものである旨主張する。

しかしながら、田辺部長、大野所長らは、本件変額保険への勧誘に当たり、共同スキーム、修正共同スキームを用いたものの、それは相続対策の仕組みを説明するために用いたものであって、七・三パーセントで銀行融資を受け、特別勘定の運用利回りが九パーセントであった場合の具体的な効果を述べたことはないことは前記認定のとおりであり、また、田辺部長らが右の条件の下では有効な相続対策にはならないことを知っていたと認めるに足りる証拠はなく、ことさらに原告らを欺罔したものと認めることはできない。

したがって、原告らの右主張は、採用することができない。

3  公序良俗違反による無効について(争点3)

原告らは、原告ていに対する本件変額保険の勧誘行為は、原告らの変額保険についての無知に乗じて行われたものであり、公序良俗に反する旨主張する。

しかしながら、田辺部長から本件変額保険の説明を受けた原告ていを除くその余の原告らは、その年齢、職業等に照らし、十分な知識と経験を備えていたものと思われ、そのような原告らが、二度にわたって長時間の説明を受けて納得した上で本件変額保険に加入することを決めたものであり、田辺部長らの勧誘の態様が公序良俗に反すると認めることはできない。本件において、保険への勧誘態様に不適切な点があったとすれば、これは説明義務違反等による不法行為等として評価すれば足り、これをもって公序良俗違反と解することはできない。

なお、原告らは、共同スキームに示されている条件ではおよそ相続対策にはなり得ない旨主張するが、共同スキームの内容は、あくまでも一定の条件下における一シミュレーションにすぎず、原告らは、そこに示されている数字を条件とする契約を締結したものではないから、本件保険契約の締結自体が公序良俗に反するとまでいうことはできない。

4  以上によれば、原告ていを除くその余の原告らの請求及び原告ていの主位的請求は、その余について判断するまでもなく、いずれも理由がない。

五  原告ていの予備的請求(被告らの不法行為責任)について

1  被告日本生命の説明義務違反(争点4)

(一) 前記認定のように、変額保険は、これまでの生命保険とは異なり、払込保険料の運用リスクを保険会社ではなく、保険契約者自身が負担し、払込保険料中の積立金特別勘定の運用成績いかんによって、成績がよければその利益が保険金額や解約返戻金額の増額という形で保険契約者に還元されるが、成績が悪ければ保険金額や解約返戻金額の減額という形で保険契約者がリスクを負担する、いわゆるハイリスク・ハイリターンの金融商品に類似する保険であり、我が国では昭和六一年一〇月に発売が開始されたばかりであることなどに照らすと、保険会社には、変額保険を勧誘するに当たっては、信義則上、顧客に対し、これまでの保険と異なる右のような変額保険の性質を、顧客の職業、年齢、知識、経験などに応じて十分に説明すべき法的義務があると解されるが、さらに、保険会社が、相続対策として、銀行から融資を受ける方法により変額保険に加入することを勧誘するに当たっては、どのような場合に、どのような条件の下で、どのような相続対策としての効果があり、また、逆にどのような場合には相続対策としての効果がなく、損失が生ずるのかを説明する義務があるものというべきである。けだし、前記三でみたように、銀行から融資を受けて変額保険へ加入することが有効な相続対策となるかどうかは、相続財産の規模の程度、解約返戻金を受け取る者の年収等諸々の要素を勘案しなければならず、特に、特別勘定の運用利回りが銀行の借入金利を一定の差をもって上回るという条件が満たされる必要があるが、このような事柄は、通常、顧客の知るところではなく、とりわけ払込保険料のうち特別勘定に回される割合がどのくらいであるかについては保険会社以外には知ることができないからである。

(二) 本件についてこれをみると、前記二で認定したところによると、田辺部長ら被告日本生命の従業員は、相続が発生した場合の相続税の支払に憂慮する原告らに対して、銀行からの融資を受けて一括して保険料を支払うことが有効な相続対策となることを強調して本件変額保険への加入を勧誘し、原告らも相続対策を目的に本件保険契約を締結するに至ったことが明らかである。

したがって、かかる勧誘をする以上、被告日本生命は、原告らに対して、どのような場合に、どのような条件の下で、どのような相続対策としての効果があり、また、逆にどのような場合には相続対策としての効果がなく、損失が生ずるのかを説明する義務があったものといわなければならない。

(三) しかるに、前記二で認定した事実によれば、田辺部長、大野所長、豊島外務員ら被告日本生命の従業員は、銀行から融資を受けて本件変額保険に加入することによる相続対策の仕組みを説明しているものの、どのような条件の下で相続対策になるのかについては何ら説明していない。特に、前記三でみたところによると、特別勘定の運用利回りと銀行金利との関係は、相続対策の効果を図る上で極めて重要であり、特別勘定の運用利回りが銀行金利を約二パーセント上回るのでなければ相続対策の効果がないのであるから、相続対策として用いる場合には、運用利回りと銀行金利との間に一定の差を保持する必要があること、保険加入者は、保険会社や銀行と密接に連絡を取り合う必要があることなどを説明すべきであったのである。しかも、共同スキームの基となった、被告日本生命内でもともと作られた文書には、相続対策のために銀行から融資を受けて変額保険に加入することの留意点として、変額保険の特別勘定の運用利回りと借入金利との間に一定の差をキープする必要があること、将来にわたり契約者本人と被告日本生命、融資先の銀行の連携が必要であることが記載されていたのであるから、被告日本生命としても、顧客に対し右の留意点を説明すべきことを認識していたものと思われる。

(四) そして、本件消費貸借契約の借入金利は年七・九パーセントであったところ、このような高い金利を支払っても相続対策になり得るのは、特別勘定の運用利回りが九・九パーセント、約一〇パーセントという高い数字を維持し続けなければならないのであるが、このことを原告らが知っていたら、原告ていは、本件保険契約を締結しなかったものと思われる。乙第三三号証の一によれば、被告日本生命の変額保険特別勘定の運用利回りの実績では、平成元年二月末から平成元年七月末までの六か月間は一年経過運用利回りが一〇パーセントを割っており、平成元年八月から平成二年二月までは一〇パーセントを超える運用実績を示し、平成二年二月末の一年経過運用利回りは一一・二九パーセントであったが、本件保険契約締結の直前である平成二年三月末の一年経過運用利回りは七・五三パーセントであったことが認められるところ、なるほど、当時は特別勘定の運用利回りが一〇パーセントを超えることも少なくなかったとはいえ、一〇パーセントを割ることもまた少なくなかったのであって、特に本件保険契約を締結する直前では、本件消費貸借契約の約定利率七・九パーセントを下回っていたのであるから、有効な相続対策にならない運用実績であったのであり、それを知ったにもかかわらず、原告らが本件変額保険への加入を決意したとは考えられないのである。

(五) したがって、本件変額保険への加入を勧誘した被告日本生命の従業員には、勧誘に際してすべき必要な説明を怠った説明義務違反があるものというべきであり、被告日本生命は、原告ていが本件保険契約を締結したことによって被った損害を賠償すべき義務があるといわざるを得ない。

なお、原告らは、全く相続対策とならない商品を販売した違法、断定的判断を提供した違法を主張するが、銀行から融資を受けて変額保険に加入することが全く相続対策にならないとはいえないこと及び断定的判断の提供があったとはいえないことは前記三及び四で判断したとおりであり、また、法規違反の勧誘の点は結局は説明義務違反の存否に帰するものである。

2  被告三菱銀行らの説明義務違反等の有無(争点4)

原告らは、高橋課長ら被告三菱銀行の従業員も、被告日本生命の従業員に同調して、本件変額保険への加入を勧誘したと主張するが、本件において被告日本生命と被告三菱銀行が、融資と変額保険加入が一体となった相続対策を共同で原告らに売り込もうとした事実は本件全証拠によっても認めることはできず、前記二で認定した事実によれば、高橋課長らが原告らと接触するようになったのは、原告らが本件変額保険への加入を決めた後であることが認められるから、被告三菱銀行が安易に本件の貸し出しをしたきらいがないではないが、高橋課長らに説明義務違反等の不法行為があるものとはいえないというべきである。

したがって、原告ていの被告三菱銀行らに対する予備的請求は、その余について判断するまでもなく失当といわなければならない。

3  損害賠償請求権の時効消滅について(争点5)

被告日本生命は、原告らは、平成三年五月一日作成のニッセイ・ライフ・インフォメーションが原告ていに送られた平成三年五月末には、本件変額保険の運用実績がマイナスであることを知り、その時点で損害の発生を知ったから、それから三年を経過した平成六年五月末には、時効により損害賠償請求権は消滅したと主張する。

しかしながら、原告ていは高齢者であり、現に前記認定のように本件変額保険への加入を実質的に決めたのは、原告ていを除くその余の原告であるから、被告日本生命からの郵便物を原告ていが見たとしても、それによって損害の発生を知ったといえるかははなはだ疑問である。かえって、甲第七九号証、原告巍之助本人尋問の結果によれば、原告ていは、被告日本生命からの郵便物については気にもとめず、ただ、しまっておくだけであったが、平成四年一一月初めに、たまたま原告ていを訪れた原告巍之助が被告日本生命からの通知書を見て、初めて元本割れになっていることに驚き、被告日本生命に説明を求めたことが認められるから、原告ていが損害を知ったのは平成四年一一月ころというべきである。

しかるところ、本訴は、平成六年九月二二日に提起されているから、消滅時効は完成していないというべきである。被告日本生命の時効による消滅の主張は、採用することができない。

4  損害賠償額について(争点6、7)

(一) 原告ていの損害

(1)  原告ていが本件保険契約の保険料として合計三億六〇三二万二五〇〇円を支払ったことは当事者間に争いがなく、平成一二年一月一二日にした原告の解約の意思表示が有効ならば、三億一六三九万四五二五円の解約返戻金債権を取得したことになることも当事者間に争いがない。

被告日本生命は、原告ていが本件保険契約の無効、取消しが認められなければ予備的に解約する旨の意思表示をしたことをもって、その意思が不明確であるからかかる解約の意思表示は無効であると主張するが、原告ていの意思は、本件保険契約が無効ないし取り消されたことによって既に存在していないなら解約の意思表示をするまでもないが、そうでなければ解約するというものであり、その意思は明確であり、無効とはいえない。賃貸借契約の解除を理由とする建物明渡訴訟で、訴訟前の解除の意思表示が無効であれば、予備的に改めて訴訟において解除の意思表示をするという場合と何ら異なるところはない。

また、解約までの間、原告らについて生命保険契約があったことによる利益(被保険者に保険事故があった場合には保険金を受け取ることができた利益)があったことは事実であるが、前記二で認定したところによると、原告らは、本件保険契約の被保険者に保険事故が発生することは予定しておらず、相続対策の目的でのみ本件保険契約が締結し、被告日本生命側も相続対策を強調して勧誘したものであり、これらのことを考えると、右利益があったことをもって、損害額からこれを控除するのは相当ではない。

そうすると、前記の支払った保険料から解約返戻金を差し引いた四三九二万七九七五円が原告ていの損害となる。

(2)  また、前記前提となる事実によると、原告ていは、本件保険契約を締結するに当たり、被告三菱銀行から三億七〇〇〇万円を借り受け、その利息の支払のため本件当座貸越契約を締結して、利息支払分を借り受けてきたが、平成一二年二月一六日現在の、本件消費貸借契約の元金は三億七〇〇〇万円、利息は五二二六万二四九二円、遅延損害金は一六〇三万六七一二円、本件当座貸越契約の借入元金は一億四六〇二万九五三一円、利息は二二万八八四六円、遅延損害金は七八九万七五九七円であり、これらの元利合計は五億九二四五万五一七八円となり、ここから本件消費貸借契約の借入元金三億七〇〇〇万円を控除した二億二二四五万五一七八円が原告ていが実質的に負担した金利と認められる。

さらに、前記前提となる事実によれば、原告ていは、被告三菱銀行から三億七〇〇〇万円を借り受けるために、被告ダイヤモンド保証との間で本件保証委託契約を締結し、その保証委託料として七三〇万二八二〇円、本件根抵当権設定契約に基づく登記手続き費用として三四〇万五三八〇円、保証委託料の振込手数料として六一八円、契約書に貼付した収入印紙代として一〇万〇二〇〇円を支払ったことが認められる。

以上の金利負担分、保証委託料、登記手続費用等の合計二億三三二六万四一九六円は、本件保険契約を締結したことによる原告ていの損害と認められる。

(3)  したがって、原告ていは、本件保険契約を締結したことによって合計二億七七一九万二一七一円の損害を被ったといえる。

(二) 過失相殺

本件変額保険への加入勧誘に際して、被告日本生命の従業員に説明義務違反があったことは前記のとおりであるが、他方、前記の認定事実に基づいて勘案すれば、原告らのうち原告ていを除くその余の原告らは、その年齢等からすると社会的常識をわきまえた人たちであり、また、配偶者を原告ていの養子にするなどの相続対策も行っており、とりわけ原告巍之助は現職の銀行員であるのであって、これらのことからすれば、原告らは、三億七〇〇〇万円もの大金を銀行から借り受けることによるデメリットは十分に理解していたことは明らかであるし、また、本件変額保険に加入することによる相続対策の仕組みや特別勘定の運用利回りが変わることを理解していたといえるから、被告日本生命側がどのような条件の下で有効な相続対策となり得るかを説明しなかったとしても、当然にその点について疑問を抱き、質問をするなどすべきであった。しかるに、原告らは、田辺部長らから長時間の説明を受けながら、その点についての質問をすることなく、相続対策にのみ考えをめぐらせ、特別勘定の運用利回りが銀行の借入金利を上回るものと軽信して、本件変額保険への加入を決めたといわざるを得ないのであって、軽卒のそしりを免れず、原告らにも、大きな落ち度があったことは明らかである。したがって、原告らの過失をしんしゃくすべきであるが、被告日本生命の本件変額保険への勧誘態様など本件に現れた諸般の事情を総合考慮すると、原告側の過失を五割とするのが相当である。

したがって、被告日本生命が原告ていに賠償すべき額は、前記二億七七一九万二一七一円の五割である一億三八五九万六〇八五円となる。

(三) 弁護士費用

本件に現れた諸般の事情を考慮すると被告日本生命の不法行為と因果関係のある弁護士費用は一三〇〇万円と認めるのが相当である。

(四) したがって、原告ていは、被告日本生命に対して、一億三八五九万六〇八五円に一三〇〇万円を加算した一億五一五九万六〇八五円の支払を求めることができるということになる。

そこで、これに対する遅延損害金についてみるに、原告ていの損害のうち二億二二四五万五一七八円は、平成一二年二月一六日までに生じた本件消費貸借契約に基づく利息・損害金に当たるものであるから、その二分の一に当たる一億一一二二万七五八九円(過失相殺により五割を減じた金額)についての遅延損害金は、同月一七日から認めるのが相当であり、その余については不法行為の後である平成二年五月一一日から認めるのが相当である(なお、予備的請求として損害賠償請求をする旨の原告ていの書面が被告日本生命に到達したのは平成一二年二月一五日である。)。

以上によれば、被告日本生命は、原告ていに対して、一億五一五九万六〇八五円のうち四〇三六万八四九六円に対する平成二年五月一一日から、うち一億一一二二万七五八九円に対する平成一二年二月一七日から、それぞれ支払済みに至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金を支払うべきである。

六  乙事件について

乙事件の請求原因事実については当事者間に争いがなく、原告ていの抗弁(錯誤による無効、詐欺による取消し、公序良俗違反による無効)は理由がないことは、前記四で判断したとおりである。

したがって、被告三菱銀行の乙事件請求は理由がある。

七  結論

以上によれば、原告ていを除く原告らの請求及び原告ていの主位的請求は、いずれも理由がないからこれを棄却し、原告ていの予備的請求は、被告日本生命に対して、一億五一五九万六〇八五円のうち四〇三六万八四九六円に対する平成二年五月一一日から、うち一億一一二二万七五八九円に対する平成一二年二月一七日から、それぞれ支払済みまで年五分の割合による金員の支払いを認める限度で理由があるからこれを認容し、原告ていの被告日本生命に対するその余の予備的請求及びその余の被告らに対する予備的請求はいずれも理由がないからこれを棄却し、被告三菱銀行の原告ていに対する請求は理由があるからこれを認容することとする。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 大槁弘 裁判官 柴田秀 裁判官 野村武範)

別紙<省略>

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